◆アプリケーションの進化とは

 動物や植物は、位置付けとしては、アナログ的な部類に入るのであろう。何故か?理由は、アナログは曖昧であり、数値に置き換えることが不可能だからである。
 人間を数値化した場合、データ量だけで膨大になるはずである。そして、膨大なデータ量を演算する為のプログラムも肥大化し、肥大化したプログラムを実行するCPUも想像を絶するパワーが必要となるはずである。
 Photoshopでアナログをデジタル化してみれば、何故データが膨大になるか、理解できるはずである。現実に忠実に再現しようとすればするほど、データ量は膨大になるのである。デジタルをアナログに近付ければ近付ける程、実際には必要の無いデータも数値化する必要があるのである。
 アナログの場合は、数値では表現していない。ゆえに、再び再現するのが難しいのである。再現するのが難しいということは、完全なコピーを作成するのが難しい…いや、不可能なのである。

 アナログの例外なコピー行為として、クローン技術という方法が存在する。この方法は、動物の本能で行う増殖方法とは全く異なる。本能で行う増殖方法は、『経験』、『存在していた時期に感染した細菌類とどのように戦ったか』等の『情報』、を交尾によって自分とは別の『情報』と融合させ、新しい『バージョンアップ』された自分をつくり出す方法を指す。本来の子孫を残す行為である。
 クローン技術は、『進化する為に子孫を残す』という動物・植物の本質(恐らくは目的)を完全に無視した行為であり、クローン技術で生まれた子孫は、全く無意味な存在とも言える。

◆バージョンアップは『進化』である

  現在『進化』ということばが一番似合うのは、もはや、動物や植物などではない。デジタルを扱っているコンピュータ業界である。
 上記のようにクローン技術に相当する方法(違法コピー)でプログラムをコピーして使用していたとしよう。コピープログラムは、長くは使用することができない。理由は、プログラムは、市場で生き残る為に進化しなければならないからである。ここで言う進化とは、バージョンアップである。
 プログラムも、生き残る為には、他社の機能を吸収することもあり得る。これは、進化を行う為に実際の動物が行う行為と非常に似ている。
 プログラムが生き残る為には、使用するユーザーにも受け入れられなくてはならない。しかし、エンドユーザーの中には、バージョンアップを嫌う者も多い。これはプログラムが生き残る為に必須である進化を理解していない為に発生する思考であると私は思う。
 例えば、これから先、印刷業界に入る方々はQuarkXPress3.3ではなく、4.0を普通のDTPアプリケーションとして使用しなければならない。3.3は既に購入することが不可能であるので、デザイナーになる大多数が4.0を使用するしか方法が無い。さらに、企業に属さないデザイナーほど4.0に縛られることになる。企業の場合、以前に使用していた3.3が存在するからである。しかし、これから先を考えると、3.3ユーザーは、少数派となっていくはずである。3.3は、デジタルでありながら、永遠に存在することはできないのである。

 デジタルフォントに視点を移してみよう。プロテクトを外したNew-CIDは、まさに進化である。Acorbat4.0の利点を重視した為に発生した企業の社運を賭けた『賭』かもしれない。
 しかし、プロテクトを外したOCFは、永久に残るのでは?と思われるかもしれないが、インターネット上でPDFを使用したいと考えた場合、フォントが置換されてしまうというOCFの仕様に、私は非常に不便と感じている。
 相手側にどのようなフォントが表示できるのか?を考えなければならない現在のWeb環境も私は不便と感じる。自分がWebページを制作するようになって、はじめて感じたのであるが、フォントやレイアウトを閲覧者の環境を考慮して作成するのは、非常にデザインの幅を狭くしている。
 フォントに関して不便と感じる面は、フォントをどのようにWebページに埋め込むか?という進化に繋がる感情であると思っている。
 又、プロテクトの一部を解除したモリサワに関して感じることは、時代が変化することを見越した、勝利70パーセントの賢い賭に出た。評価できるレベルであると私は思っている。

◆バージョンアップについてこれないユーザーは、己の進化をとめる

 『進化』を頻繁に行える企業というのは、市場に対して敏感であると言える。価値を素早く見極め具体的な機能にする、頭脳と力を持った業界の流れを変えることのできる力強い企業であるはずである。実際にAdobeは、印刷業界の写植部門を崩壊へと招いた実績がある。全ての写植部門が崩壊したのではない所に注目してほしい。Adobeが与えた急激な業界の変化に、対応することの出来なかった企業だけが崩壊しているのである。

 実際にアプリケーションを使用するユーザーは、進化に伴う『学習』や『投資』をネガティブに受け止める傾向があるが、『進化についていけないエンドユーザー』は、『業界の流れを変える可能性のある企業の頭脳』についていけないのと同等であるとも感じる。
 考え方が逆転しているのでは?と言いたいエンドユーザーも多いかもしれない。しかし、『進化』の激しいコンピュータ業界に籍を置いてしまった、印刷業界の運命は、『進化』の激しいコンピュータ業界の法則に従った方が、印刷業界と長くつき合うことができそうであると私は私の中で結論を出している。

 現在の印刷業界は混沌としている。Web、PDF、eBOOK。これら新しい媒体は、激しい『進化』を続け、印刷業界に挑戦し続けるであろう。印刷会社がこのような新しい媒体とつき合うのを止めた時点で、『写植部門崩壊』と同じ道を歩むはずである。
 退化してしまったDTPが、どの程度の利益をもたらしているか…。現実を知っている方であれば、答えはおのずと出てくるはずである。 

(991212)


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