PS2は、ネットワークを征すのか

 昨日2000年3月4日、ソニー・コンピュータエンタテインメントのプレイステーション2(以下PS2)が発売された。巷ではWindows95レベルか、それ以上の大騒ぎであったようである。それはそれで、ソニーが好きである私にとっても嬉しいことなのであるが…。

 購入されている方々は、何故ソニーがPS2にこれほど力を入れているかを、考えたことがあるだろうか。『ゲームをやりたいので、購入しているだけのこと。メーカーは何処でもいい…』と考えている方々が大多数なのかもしれないが、一度じっくりと考えてみることをお勧めする。PS2を購入することによって、非常に画期的な環境が用意されたことに気が付くはずである。そしてソニーの着眼点の先見性に感動するはずである。

初代CDウォークマンD-50

 1984年に発売された初代CDウォークマンD-50をご存知であろうか。当時はディスクマンと呼ばれていた。
 持ち運ぶ場合、大きなアダプター(キャリング型バッテリーケース)を必要とし、バックのように肩からかけなければならなかった。ウォークマンと呼ぶにしてはかなり無理のある製品である。このような大きい再生専用機を持ち運び、ウォークマンのように手軽に音楽を楽しむのは非現実的であり、実際に利用している方は、稀だったはずである。

 実際、D-50を歩きながら聴いている方を私は1回しか見たことがない。この製品は非常に小型であるが、家庭で聴くことを前提とした製品なのである。だからディスクマンと名付けたのかもしれない。
 このCDプレーヤーの価格は、49,800円であった。標準オーディオサイズで99,800円が『安い』と言われていた時代であり、オーディオマニアが納得する音が聴ける機種の場合150,000円であった。
 CDプレーヤーに対して価格破壊を行った製品であるはずのD-50は『赤字』製品であった。売れても売れても赤字なのである。赤字覚悟で赤字製品を製品化したのである。

何故赤字であるのに、製品として売り出したのか

 何故赤字であるのに、製品として売り出したのか。
『CDプレーヤーが売れる』からである。
 CDプレーヤーが売れた後には何が起きるか、CDプレーヤーが普及すればCDが売れるのである。
 音楽が記録されている媒体はCDであるが、『ソニー』がCDを作っているのである。これは、非常に重要な部分である。
 音響メーカーは、再生する機械を売り、再生する為のソフトを売り、そのソフトをコピーする為の機械を売り、そのコピーを再生する機械を売っている会社なのである。『ソフト』を扱っているがゆえに、コンピュータメーカーと共通する部分が非常に多い。マイクロソフト製品がシェアNO.1である理由も同じようなものである。又、赤字を発生させてシェアNO.1になる方法を取っても、その赤字を上回る利点が存在することにも注目する必要がある。

 PS2に視点を戻そう。PS2で非常に重要な部分は、私は通信機能であると思っている。
 CGの処理速度やMPUに話しが進むのが巷の視点であるが、私はCGやMPUやDVDは、ユーザーを『とりあえず掴む為』の“ささやかな要素”にずきない…と思っている。
 DVDに関しては第1ステップであり、これは重要な部分でありDVDソフト普及の戦略であることは、前に書いたCDプレーヤー『D-50』を読んでいただければ理解できると思う。
 D-50と同じようにDVDウォークマンなどを発売したとしても、DVDという媒体だけでは一部のマニアにしか受け入れられないはずである。何故かであるがVHSで十分だからである。DVDである必要はないのである。

 私はオーディオに関しては神経質なのであるが、ビデオの場合は全く逆である。LDの場合そして、HQ-VHSやハイバンドβの場合でも、『すごいね』とは感じたが、購入したいとは思うことができなかった。理由は、『高画質で見なくとも、内容は理解できるし、感動できる』からである。
 オーディオの場合は『品質に対する視点の重要性』が全く違うのである。『音場の表現』を実現しないと『音に対して感動』はできないのである。少し話しがそれるのでここまでにするが、ビデオを『高画質で見る必要がない』と思われている方はけっこう存在するのではないだろうか。LDの場合、ソフトを購入しても『一年に2〜3回も見ていない』という方々が私のまわりには多い。購入した時点で満足するのである。これは切手の収集と同じ視点で購入しているということであり、完全にマニア領域である。

 ソニーが次世代を考えPS2をこの世へ送りだしたのは、製品を売る為というよりも、顧客データを収集し、製品によって顧客を得るのではなく、顧客を得て製品を売るという戦略を実行する為の第1ステップであると私は思うのである。

 具体的には、以下のようなことが実現可能である。

  • PS2を通じて製品情報を個人レベルで発信する。
    →顧客情報などはPS2購入時にユーザー登録等で行えばいい。
  • ネット銀行に対して残高を確認する等。
    →ソニー銀行に対する付加価値。PS2を使用すると思われる若年ユーザー層レベルから顧客を得る。これから社会を背負う世代である。
  • PS2を通じて音楽ソフトを配信
    →手軽にソフトをD/L可能。流通経費の削減。価格を下げることによって、PS2自体の購入意欲を上げることも可能。
  • ホームトレーディング(株の売買)
    →ネット銀行から発展することは十分考えられる。

 注目すべき部分は、『運用による利益確保』を行う為に存在する銀行である。現在の日本の銀行は、DTP分野で言い換えるとQuark社のような立場であると言える。これは、『日本の銀行しか知らない、大金を多く持っている日本人』は、日本の銀行しか選択できない状態なのであるが、『日本の銀行を利用している顧客は決して日本の銀行に満足しているのではなく、逆に不満の方が大きい』のである。

 ソニーの銀行進出は、電子商取引への対応である。商品代金の支払いを円滑に行う為への対応であるとマスコミには発表している。だが、さらに重要なのは、フルバンク機能も提供するという部分である。

 PS2やVAIO、そしてメモリースティックという製品全てを考慮してネット銀行を考えた場合、PS2を核とした、ネットワーク制覇という、『巨大な構想』が存在するように思えないだろうか。例えば、顧客情報から顧客一人レベルで必要であるであろう情報をピンポイント的に発信することが可能である。この方法は、無駄な情報が少ないが故に、顧客が送られてくる情報を得ようという思考が働く。読んでも無駄が無く効率的だからである。そして、ネット銀行で決算。そして運用である。

 ソニーは、この運用を重要視しているのではないか?と私は思っている。運用から得られる利益は大きい。製造設備を抱える必要の無い銀行というシステムの利点である。

 VAIOは、中高年層、PS2は少年青年層、メモリースティック(メモリーカード)、i.Linkは、VAIOとPS2そして家電とを繋ぐ媒体、そして、インターネットは、SONY製品とSONYがこれから行おうとしている事業を繋ぐ重要なネットワークである。
 このネットワークは、顧客全てに大きな影響を及ぼすのである。この影響で最も期待できるのは、金融サービス面であると私は思うのである。現在の日本の銀行のレベルを超えるのは、比較的簡単である。現在の日本の銀行の印象の悪さと閉鎖的な体質は、十分すぎるほどプラスへ動くはずである。
 そして、ソニー銀行は恐らく投資信託へと事業展開、さらにそれを超えホームトレーディングへと進むのではないかと思うのである。もちろんPS2を利用し個人レベルで株の売買を行うことになる。

 最後に…以上は、私の推測である。

 ソニーは、日本企業では体質的になかなか進むことのできない方面へ簡単に進むことのできる企業である。戦略という武器を巧みに利用し、21世紀には、現在では予想もできない事業展開を行うのではないか…と私は考えている。

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